桜が散ったら、君に99回目のキスを。

相馬くんが何組か分からないから、コートの真ん中辺りで観戦しようと言ったかこに賛同して体育館の端に設けられた観客席に腰を下ろす。


「試合って何時からだっけ」


「2試合目は11時からみたい」


体育館中央の壁に貼ってあるトーナメント表を眺めながらそう伝えると、かこはうんと目を細めて体を乗り出した。


「円依あれ見えるの?」


確かに貼ってある場所は観客席からは離れているし文字も小さいけれど、見えないと言うほどのことではない。


「私、目はいい方なの」


家では昔からゲームが禁止だった。


そのおかげか両目とも視力は1.0以上ある。


かこは目が悪いんだっけ。


少し前にコンタクトが合わなくなってきたなんて話を聞いた気がする。


「いいなぁ。私、コートにいる人の顔識別するので精一杯。こんなことならもっと早くコンタクト変えとけばよかった」


かこは顔を顰めて不幸を嘆く。


ちょうどその時、甲高いホイッスルの音が体育館に響き渡って、ちりじりに散っていた生徒たちが集まり始めた。


「そろそろ始まるみたい」


観客席も試合に出ない生徒や保護者の人で埋まってきた。


…ドキドキする。


電車以外で相馬くんと会うのは初めてだし、制服じゃないから気づかれなかったりしたらどうしよう。


そんなわけないと信じたいけれど、私と相馬くんを繋ぐのは名前だったり学年だったり、ほんの少しの情報と、たった15分の片道電車だ。


彼がスポーツする姿も、友達と談笑する姿も、私は何も知らない。


それを覗き見ることができるのは浮き立つようでもあり、臆するようでもあった。


ピー・・・


また、ホイッスルが鳴り響く。


それと同時に、オレンジ色のバスケットボールが手に弾かれ、球技大会が幕を開けた。


歓声の中で、私は無意識に相馬くんの姿を探していた。