桜が散ったら、君に99回目のキスを。

「円依…!」


微かにかこの声が聞こえて顔を上げると、改札口から栗色の髪を揺らしながら手を振って駆けてくるかこの姿が目に入った。


「ごめん、待った?」


かこは手ぐしで髪を整えながらありがちなセリフを唇に乗せた。


私は立ち上がってううん、と首を横に振る。


「私が早く着きすぎたの」


「なら良かった。服と髪、悩んじゃって」


並んでゆっくり歩き出しながら、かこが苦笑いした。


今日のかこはいつもと少し雰囲気が違う。


いつもポニーテールにしてるミディアムヘアはストレートにして下ろしているし、服装だっていつもより女の子らしくて大人っぽい。


落ち着いた赤のシースルートップスが控えめに彩られた唇によく似合っている。


「彼と会うんだもん、悩むよね」


私だって相馬くんと会えるかもしれないというだけで、どんな服にしようか昨日の夜から頭を悩ませていた。


結局無難に花柄のトップスと腰にワンポイントあるロング丈のスカートでまとめたけれど、相手が彼ならもっと気合いが入るに違いない。


「幼馴染だからいつもと違うようにしなきゃ見てもらえないって結構損」


唇を尖らせるかこに、そんなことをしなくても意識はすると思うけどな、と思ったけれど、男の人の気持ちに特別理解があるわけじゃないから黙っておいた。