「きっと、被害者も必死に抵抗したんでしょうね・・。」
「もしくは物盗り目的だったか・・。」
「あ!多分、物盗りじゃないっすよ!」
今日も鑑識帽を逆に被って、
“HipHop聴きながら作業してるの?”
と思わずツッコミたくなるような軽快でリズミカルなステップ。
先ほどから部屋中の指紋を採取していた・・
“長くん”こと長野君が作業を中断して僕達に近寄る。
強面揃いのセイズ署刑事課において、
僕より若い年齢ながら、
鑑識班を率いる長くん。
なんでもこの子は・・父、母、二人の兄。
一家まるまる警察官で・・
しかもみんなそれぞれ勤務する全国の各警察署の、鑑識班に所属しているらしい。
そんな鑑識一族のわんぱく末っ子が、テーブルに置かれた遺留品の一つを手に取る。
「ほらこれ。
財布の金はそのまんまでした。
他にも金目になりそうな物がいくつか残ってる点から、物盗りの線は無いっすね。」



