「・・・観音菩薩が、
“空”の思想を説いた般若心経です。」
『・・・・・・。』
「門田さん・・・。
あなたの証言は、そのほとんどが嘘だったかもしれない。
僕を欺いて・・より一層、漆原へ捜査の目を向けたかったのかもしれない。」
『・・・・・・・・。』
「だけど心臓が止まる最期に想った事、
口に出した事は・・嘘偽りの無い本心だったはずです。」
『・・・・・・・・・・・・・・・。』
「ワタル君を苦しめてしまっている。
悪い事だと自覚していても止められない。
2人の関係に綻びを作ってしまったのは、
他の誰でもなく自分だ。
・・そう分かっていたからこそ、あなたは最期にあの台詞が口に出たはずです・・。」
『・・・・違う・・・・。』
「・・・・・・・・・。」
『違う!!』
「お経は、死者を成仏させる為に詠まれるものではありません。
詠う者も、詠われる者も、
それを聴く者も。
悩み、苦しみ、哀しみ・・
人間が持つあらゆる感情を克服し、
心安らかに“空”の境地を開く為に唱える。
そう父に教えてもらいました。」
『・・・・・・・・・・・・。』



