翌日の昼間、営業さんたちが外出中に電話があった。

「本社の山本です。
 所長はいらっしゃいますか?」

たまたま電話を受けた私は所長に代わる。

「………中橋ですか?
 まぁ、若いですが、落ち着きもあるし、
 人をまとめる力はあると思います。
 ……… 所長…も、あいつなら務まると
 思います。
 ………はい、はい、分かりました。今夜
 戻り次第、伝えます」

これ、中橋さんを所長にって内辞の電話!?

中橋さん、いなくなっちゃうんだ。

手が届かない人だと思ってた。

それでも、見てるだけで良かったのに……

もう、見てることもできなくなるなんて……

あの優しい声で「ねこ先生」って呼んでもらえなくなるなんて……



異動するなら、月末かな?

あとひと月弱。

中橋さんが気持ちよく契約を取れるように、精一杯、指導をがんばろう。

私は一人でそう決意した。