あたしは花坂結愛|《ゆあ》
地元の中学に通う2年生

2つ上のお兄ちゃん、お父さん、お母さんの4人家族

電車で3駅のところにお母さん方のおじいちゃんおばあちゃんが、乗り換え含めて1時間弱のところに、お父さん方のおばあちゃんが住んでる

お父さんとお母さんは仲良しで、たまにお母さんが疲れて愚痴っても、お父さんはうんうんって聞いてあげてる

それ八つ当たりでしょって思うこともあるけど、お父さんは黙って聞いてるから

お父さん優しすぎ、って言おうとすると

お母さんは聞いてあげてたらそのうち収まるからいいんだよ、って、笑顔なの

たまにお兄ちゃんが、母さんは父さんに甘えすぎだぞ、って制するんだけど

いいの〜ダンナさまなんだから、って、さっきまでのご機嫌ナナメが、もう直ってる

お父さんは、お母さんのお薬みたい

お父さんとお母さん、ほんと仲良しだよね、ってお兄ちゃんに言ったら、オレらもだろ、って頭ぽんぽんされた

「…うん」

前までは簡単に言えた、お兄ちゃん大好きっていうことば、いまは心の中で呟くだけ

小学校3年生くらいまではお兄ちゃん大好きって平気で抱きついてたし、一緒にお風呂入ったり隣で寝たり、いつもお兄ちゃんにくっついて遊んでた

友だちは、足手まといになるからって、お兄ちゃんやお姉ちゃんに邪魔にされてたけど、あたしのお兄ちゃんは全然そんなことなくて、いつも待っててくれた

自転車で遠出のときは留守番で寂しかったけど、いい子で待ってろよ、って頭ぽんぽんされたら嬉しくて、うんっといい子にしてようと思って待ってて

玄関にお兄ちゃんの自転車の音が少しでも聞こえようものなら、何をしていても急いで迎えに行って

「お兄ちゃんお帰りっ!」

て、抱きついてたけど、いまは…そんなことできない

小4の頃に気づいたの

あたしの、お兄ちゃんに対する気持ちが、ただのお兄ちゃんっ子とは違う、ということに