そうこう話しているうちに、真っ暗な私の家に着いた


「到着致しました。」


「ありがとうございました。」


昨日と今日の分のお礼をして、福嶋さんにドアを開けてもらう前に自分で車から降りた

だって、私はお嬢様でもなんでもないもの


「本田くんも、ありがとう。また明日。」


本田くんへのお礼も済ませて、クルマに背を向けた

玄関の扉を開け、後ろを振り返ると、本田くんが車から降りてきた


「真鍋さん。」


「何?」


「明日、10時に迎えに来ます。待っててください。あ、明日はスカート禁止でお願いします。」


「うん。分かった。私、スカートなんてほとんど持ってないから安心して。」


「では、また明日。」


「また明日。」


なんでスカート禁止なのかは分からないけど、本田くんの事だからなにか理由があるのだろう


今日は真っ暗な家に帰ることが怖くも、寂しくもないんだ


心の中で“ ありがとう ”と呟き、家の中に入った


家を見る限り、お母さんは昨日も帰ってきてないみたい


ホッと胸を撫で下ろすと、今着ているワンピースから部屋着に着替えた


改めてワンピースを手に取ると、タグに書いてある文字が目に止まった

これって、ブランド品?

やっぱり無理にでも本田くんに返せばよかった

でも、返したら返したで本田くんならほんとうに捨ててしまいそう

男の人にとってはいらないものね



明日、楽しみだな

明日を楽しみに思ったのはいつ以来だろう

自分でも顔が綻んでいる事がわかった

ほんと、自分じゃないみたい



寝る準備をさっさと済ませて、遠足前の小学生のように胸を高鳴らせながらベッドに入った


眠れないんじゃないかというちょっとした心配が無駄だったかのように、あっという間に眠りに落ちた