放課後になり、俺はあらかじめ見つけておいたサボり場所に向かった


第4音楽室


誰にも使われていない穴場スポット

歴代の学校の頭がここを使っているのもあってか、教師もここには近づかない

家に帰るのも面倒で、倉庫に行く時間まで、寝ることにした

なにより、家よりここの方が倉庫に近い


眠りに落ちるのはあっという間で、俺はソファに身を預けた




…どれくらい寝ただろう

しばらくソファで眠っていると、ドアがガラッと開いた音で目が覚めた


「誰…?」


俺の場所に入ってくるなんてなかなか度胸のあるやつだと、少しだけ怒りが湧いた

だが、そう思ったのはその相手の顔を見るまでだった


「寝てるところ邪魔してごめんなさいね。本田くん、であってる?」


「あぁ、真鍋さんでしたっけ?こんなところでなにしてるんですか。」


真鍋夏音
隣の席の頭がいい不思議な女

先程まで湧いていた怒りは、嘘のように消え、彼女を目で捉えた


「学校を散策してただけ。ここ広いから。ここにはもう来ないから安心して。じゃあね。」


そう言って帰ろうとする彼女を俺は呼び止めた

何やってるんだよ俺は…

明らかに面倒そうな顔をした彼女に、俺は思ったままの言葉を投げかけた


「真鍋さん、俺の事知らないんですか?」


何言ってんだと言いたげな顔の彼女は、俺をなんだコイツという目で見てくる

だが、この辺りで俺たち夜月の幹部を知らないやつは多くない

俺をこんな目で見てくるやつは久しぶりだ


「知ってるわよ。本田凪斗くん。私の隣の席。」


「いや、そうじゃなくて。」


さらに不機嫌な顔になる彼女は、夜月のことなんて知りもしないのだとこの時確信した

じゃあ、俺という存在はどう見えているのだろう


「じゃあ、聞き方を変えます。俺が怖くない…?」


「全然怖くない。」


食いつき気味にそう言った彼女の刺々しい言葉は、俺にとっては最高の言葉だった

きっと彼女は、これからも他の誰も言わないような欲しい言葉をくれる気がした


「じゃ、私は行くわね。」


「はい、引き止めてすみません。」


さっきの言葉に満足した俺は、彼女をすんなりと帰した

彼女が出ていってすぐ、俺は倉庫に向かい、幹部にお気に入りが見つかったことを話した

俺の機嫌がいいことをからかってきたことは今回ばかりは見逃してやろう