私…、何期待してるんだろ…

昨日今日初めて会った人を頼ろうなんてね…

そう色々考えると、やけに心が落ち着いて、頭が冷静さを取り戻した


「私は、仲間なんていらない。さっき私が言った言葉、責任とってってやつ、なしにしていいから。」


「やっぱり、真鍋さんは口の割に顔は素直ですね。」


きっと、また本田くんにはバレているのだろう

私が孤独を嫌っていることも見透かされ、人の温もりに触れることも恐れている

でも、本田くんが私から離れない保証はどこにもない

それなら、今まで通り、自分で自分を守り続けよう

弱い私は、きっとそれしか出来ないから


「私、帰るわ。もう、ここにも来ないだろうから、安心してください。」


安心してくださいって言うのは、倉本くんに対して放った言葉

彼はきっと私のことを嫌っている

というか、人間不信っていう感じなのかな?

だから、私は彼にとって邪魔な存在

私の言葉に少し驚いたような表情を見せたけど、それには気付かないふりをする


「本田くん、さっきはみっともない所見せてごめんなさいね。もう、こんなことないから。じゃあ、さようなら。」


「待ってください。ここはもう真鍋さんの居場所です。いつでも好きな時にこの部屋にも来てください。俺が送るって言っても聞かないだろうから、さっきの海志に送らせます。」


それも断りたかったが、下を向いて歩いてきたせいで、ここがどこだか分からない

本田くんじゃなければ誰でもいい

今は、彼の顔を見ていると泣きそうになる


「わかった。じゃあ。」


「はい、また明日。」


また明日……

こんな酷い態度とってるのに、また明日なんて言わないでよ

期待させないで……

それから、幹部室を後にし、海志くんに家の近くのコンビニまで送ってもらった

家まで送ると言われたが、そこは断った

残りの家までの道をゆっくり歩き、真っ暗な家の前で足を止めた

時刻は夜中の1時

周りの家も電気はついていないが、私の家はもっと暗い闇に包まれているように見えた

止めていた足を動かし、家の中に入る

何も声なんて聞こえないはずなのに、さっきの光景が頭をよぎった


『おっ、凪斗おかえりー。って、なんで真鍋さんいんの?そんでなんでびしょ濡れ?』
『おかえり……。』
『おっす。』


あー、触れすぎた……


あの温かさは、私には刺激が強すぎたみたい……


「ただいま……。」



『おかえり。』



そう帰ってくる声はあるはずがない

これがいつも以上に悲しくて、辛い……


「フ…ッ……なんでよ……ッ。一人なんていつもの事でしょ……っ?グス……ッ」


なんで、こんなに寂しいのよ……

なんで、こんなに泣いてるの…?

訳の分からない感情に支配されて行く感じがして、恐怖すら感じる

その時、記憶が戻る感覚がまた訪れた


「ウッ……アァ……ッ…」


頭が痛い……

頭痛と訳の分からない感情のせいで余計に涙が溢れ出す

痛みのあまり目を閉じると、カウンセリングの時の記憶がまた蘇ってきた


星の綺麗な夜

海辺の道を手を繋いで歩いている笑顔の私とお父さん

すると視線の先から無数の光が私たちに近寄ってくる


あれは、何?

その光が私たちに近づいてくると同時に、爆音も近づいてくる

近づいてきてやっと、その光の正体が分かった



それが、無数のバイクだということを……


ズキンズキン


あー、限界だ


目を開けても真っ暗で、虚しさが心を支配する


鈍痛が残る頭を気にしながら私は自分の部屋に戻った

さっきのバイクの大群はきっと暴走族なのだろうか



ということは、暴走族の事件に私とお父さんは巻き込まれたってこと?

もう訳が分からない


でも、そうだとしたらもう彼らとは本当に一緒にはいられない

お父さんを裏切れないでしょ?


やっぱり、少しは期待してたのかな?


一人じゃなくなるかもって……



少しだけ色付いた心が、また黒く染っていく気がした……