グレーとクロの世界で



「なんて顔してるんですか。」


そんな変な顔してる?

そんなに不機嫌な顔してるかな?


「そんな泣きそうな顔しないで下さい。ほっとけなくなります。」


泣きそうな顔?

私が?


「そんな顔してない。」


「してますよ。真鍋さん、口の割に顔は素直なんですね。」


何なのよ

なんで、本田くんにはバレるの?

今まで泣きそうな顔なんてバレたことなかったのに

みんな、私を見ても不機嫌か怒っている顔としか言わない

なのに、なんで本田くんには分かっちゃうのかな……?

悔しいのか悲しいのか、はたまた嬉しいのかは分からない


「フッ……グスッ……」


いつぶりに泣いたのだろう
それすらも分からない

でも、今までずっと泣きたかったのかもしれない

泣き顔が見られないように下を向き、本田くんに背中を向けた

すると、後ろから足音が近づいてきて、背中に温もりを感じた


「大丈夫。真鍋さんを一人にはしません。」


なんで、そんなこと言うのよ

責任とってくれるの?

もう、その言葉信じちゃうよ?


「その言葉の責任、取りなさいよ……。」


「はい。嘘はつかない主義なので。」


背中から温もりが消え、かわりに片手を引かれ歩き始めた

二人を打ち付ける雨は弱まることを知らない

どこに連れていく気なのかもわからないが、この手を離して欲しくない

今、この思いに勝ることは無かった