その裏、星さんも簡単に3者凡退で、相手の攻撃を退け、迎えた2回。


先頭打者のキャプテンは四球。ランナ-を出したのはいいけど、続く新5番の澤田さんがショ-トゴロ併殺打、あっという間にチャンスが潰える。


「また、このパタ-ンかよ。」


佐藤くんの苛立った声が聞こえて来る。この後、河井さんがヒットを打ち、攻撃のチグハグさが余計に目立ってしまう。続く7番の後藤さんが三振に倒れ、結局無得点。


「さぁ、行くぞ。」


一番もどかしい思いをしてるはずのキャプテンは、それをおくびに出すことなく、ナインにそう声を掛けると、真っ先にベンチを飛び出して行く。


「澤田さんに送らせるべきだったよな。」


佐藤くんの言葉に


「でも、この間の試合では、早い回のバントは古いって言ってたよね。」


と私が思わずツッこんでしまうと、佐藤くんはグッと詰まる。


「どっちにしても、結果論さ。とにかく、試合はまだ序盤だから。」


松本くんが取りなすように言ってくれて、私たちはまたグラウンドに目を向ける。


星さんは快調なピッチング。


「正直、この辺の相手じゃ、星さんの敵じゃないよ。」


自分の出番は当分ないと、白鳥くんは悠然たるもの。


「うずうずして来ないの?」


「真打の出番は、まだまだ先だから。」


私の問いに、白鳥くんはそう言って笑う。


「バカ、生意気なこと言ってるんじゃない。ブルペンに行くぞ。」


それを村井さんに聞き咎められて、白鳥くんは舌をペロリと出すと、そのままブルペンに引っ張られていく。


「白鳥は余裕だな。」


「いつでもスタンバイOKって感じだ。」


佐藤くんと松本くんはそんなことを言い合っている。


試合は明らかにこちらが押している。毎回のようにランナ-を出すけど、チャンスにもう1本が出ない。本当に見ていて、もどかしい展開のまま、試合は後半戦に。


6回の攻撃は1番の大宮くんから、好打順だ。


「この回で、なんとかしよう。大宮、もう遠慮はいらん、打って行け。」


という監督の声に


「はい。」


大宮くんが嬉しそうに返事をする。


「大宮が出れば、東尾さんが送って、ランナ-セカンドで星さん、キャプテンの3、4番の登場だ。そうなったら、相手も逃げ回ってばかりはいかなくなる。」


松本くんの言葉に私は頷く。ここまでの試合でウチのチ-ムが取った得点は松本くんのホームランと、まさに今、彼が言ったパタ-ンで取った2点しかない。