「凄い重さだよね、物理的な重さだけじゃなくて、いろいろと。」


男子2人がやや持て余し気味の様子を見ながら、五十嵐さんが言う。


「そうです、ね・・・。」


私が頷くと


「どうするの?これ。」


五十嵐さんは聞いて来る。


「一緒に甲子園に連れて行くつもりです。」


「えっ?」


私が答えると、五十嵐さんだけじゃなく、佐藤くんも澤田さんも驚いたように私を見る。


「もちろん全羽なんて無理ですけど、各校からお預かりした鶴を一羽ずつ、改めて織り直して。そして偉そうな言い方になってしまうかもしれないですけど、神奈川の全高校の野球部のみなさんの思いと一緒に甲子園まで行こうと思います。」


「そっか・・・それは嬉しいな。ありがとうね、木本さん。」


その私の答えに、五十嵐さんは本当に嬉しそうに微笑んだ。そして


「改めて優勝おめでとうございます、明協さんは甲子園初出場ですよね。悔いのないように、力一杯戦って来て下さい、私たちの分も・・・応援してます。」


そう言うと、後輩2人と一緒に五十嵐さんは頭を下げてくれた。


「神奈川県の代表として恥ずかしくない戦いを出来るよう、全力を尽くします。ありがとうございました。」


私も万感の思いを胸にこう答えると、澤田さん、佐藤くんと一緒に頭を下げる。そんな私たちにもう1度、素敵な笑顔を送ってくれた五十嵐さんは踵を返して行く。


「木本。」


「うん?」


「千羽鶴作り直す時、俺も手伝うからな。」


五十嵐さんたちの後ろ姿を見送りながら、佐藤くんがこんなことを言い出す。


「うん、ありがとうね、佐藤くん。」


「ああ。」


「さ、戻ろうか。」


澤田さんの声に頷いて、私たちも歩き出した。