「マネ-ジャ-があんまりでしゃばるな、そんな空気は正直あった。私のノックを受けることに拒否反応を示す選手もいた。あとから聞いた話だと、監督に私を副キャプテンにしたことを面と向かって批判して来たOBもいたみたい。でも監督はそんなことなんか、おくびにも出さないで、私を全面的に支持してくれて。そのうち、私に批判的だった選手たちとの距離も徐々に縮まって来て・・・でも仲間のはずの他のマネ-ジャ-との距離が逆に出来てしまってさ。」


「・・・。」


「タメの子とは、実はずっとしっくりいってなかったんだけど、『紗耶香とは考え方が合わない』って言われて。後輩には『私たちは山下さんのようにはなれないですし、あとを引き継ぐ自信もありません』って・・・。新年度になって、懸命に募集活動したんだけど『野球部のマネ-ジャ-は鬼のような3年生が居て、過酷で厳しい』って噂になっちゃって。とうとう1人マネ-ジャ-のまま、卒業することになってしまったの。」


そう言って、山下さんはため息を吐いた。


「正直言えば、私は他のマネ-ジャ-に不満を持ってた。なんでもっと一所懸命にやらないんだろう、もっと私たちにやれることはあるよねって。だから厳しいことも言ったし、ケンカもした。でも、自分だけが頑張ってる、自分のやり方が絶対に正しいんだって思うのは、あまりに傲慢だよね。今になって、そう思えるんだけど、あの頃は・・・やっぱり私も子供だったんだね・・・。だから彼女たちには申し訳ないことをしたと思ってるし、マネ-ジャ-不在期間を作ってしまって、チ-ムに迷惑を掛けてしまったことを後悔してる。」


「山下先輩・・・。」


「それだけに、今年、木本みどりっていう優秀なマネ-ジャ-が入部したって聞いた時は、とにかく嬉しくて、ホッとしてさ。」


「そんな・・・。」


「本当はすぐにでも会いに来たかったんだけど、西たちに煙たがられてるのわかってるし、なんか今更顔出しにくくて。」


「そんなことありません。キャプテンたち、喜んでたじゃないですか。」


「そうかな?」


「はい、私もお目に掛かれて、嬉しかったし、一緒にお仕事できて、勉強になりました。ありがとうございました。」


私が笑顔でお礼を言うと、山下さんも嬉しそうな表情になる。


「本当言うと、先輩の仕事ぶりを見て、私もちょっと落ち込んでたんです。でも先輩を目標にするのはいいことだけど、先輩と私は違う人間なんだから、同じようにはなれないし、なろうとする必要もないって言ってくれた人がいて。そして先輩からも同じような言葉をいただいて。勇気が出ました。先輩のどこまで近づけるかはわかりませんけど、私は私なりのマネ-ジャ-になって、チ-ムの力になれるように頑張ります。」


「それでいいんだよ、みどり。改めて・・・後はよろしくね。」


「はい!」


私の返事に、山下さんは大きく1つ頷いた。