「天野、あのさ、
さすがに、ちょっと無防備すぎる」


「あ、ご、ごめんなさいっ」


「ほら」


一ノ瀬くんに手をつかまれて、
ひっぱり起こされた。


「大丈夫?」


「う、うん」


と、答えたけれど

もうっ、心臓が、
破裂しちゃいそうだよっ。


って、
ひっくり返った私がいけないんだけど!


すると、一ノ瀬くんが
ちらりと視線をとがらせる。


「俺、やっぱり、
今、ちょっと怒ってるかも」


わわっ、怒らせた!


「ご、ごめんなさいっ」


「うそ、怒ってない。
けど、そうじゃなくてさ。……はあああ」


もう一度深いため息をついた一ノ瀬くんの
顔をのぞきこむ。


「ごめんね?」


じっと一ノ瀬くんを見つめると、

一ノ瀬くんが大きく目を見開いて
動きを止める。


「天野、今ちょっと戦ってるから、
マジで近づかないで」


頭を抱える一ノ瀬くんに
首をかしげる。


「う、うん? でも、なにと戦ってるの?」


「煩悩?」


「う、うん?」


ボンノウってなんだっけ?


と考えたところで、ふと首をかしげる。

そういえば、
どうしてこんなことになってるんだろう?


「あっ! そういえば頼み事って?」


すると、

いきなり一ノ瀬くんが
パンっと
じぶんのほっぺたを両手で強く叩いた。

用具室に響いたその大きな音に
ビクっと飛び跳ねる。


び、びっくりした……


すると、
一ノ瀬くんがぶんぶんと頭を大きく振って

一冊のノートを取りだした。


「これ」


渡されたノートを開いてみてみると、
そこに書き込まれているのは、

バスケットゴールを中心として書き込まれた半円だった。