「天野に見られたら緊張しすぎて、
まともに練習できなくなると思って、
焦ったんだよ」


「お前、ホント終わってんな。
もうさ、天野さんはやめておけば?

なんか、こじれすぎてないか?
お前がひとりで自爆的に。

他の女子なら
喜んで彼女になってくれるだろ。

ほかの女でいろいろと練習してから、
天野さんのこと改めて考えれば?」


「お前、本当に最低だな」


できるかぎりの軽蔑の眼差しを
伊集院に向ける。



「そもそも天野以外の女に、
まったく興味がわかないから無理。

むしろ、全世界の女に嫌われてもいいから、
天野だけがいてくれればいい」


「それ、
そのまま天野さんに言えばいいのに」


と、そこまで言って伊集院が
動きを止める。


「んー、いや、それ言ったら、
マジで引かれるか。

うん、それを言うのはやめておけ」


「……わかってるよ」


そもそも、
そんなに簡単に思ってることを言えてたら、
ここまでこじれてない。


「あのさ、同じクラスになってから、

ずっと隣の席なのに
天野さんのこと落とせてないわけじゃん?

学校一の人気者の一ノ瀬君がさ。

天野さん、
ほかに好きな奴がいるのかもよ?」


その言葉に鷹島の顔が浮かび、
手にもっていたペットボトルを握りつぶした。


「おおっ! 頑張れ、キラくん♪」


「お前、
俺のことバカにして楽しんでるんだろ?」


「当然♪ ほかに楽しみもないしな」


「お前に好きなやつができたら、
全力でバカにしてやるから。覚えておけよ」


「残念なことに、野球部は恋愛禁止。

だからこそ、爽やかなイメージを
崩さずにいられるってな」


「伊集院もいい感じで性格最悪なのにな」


「ホント、俺もそう思う!」


けらけらと肩を揺らして笑っている伊集院に
ため息をついた。