教室にもどると、
無意識のうちに天野の姿を探す。


チャイムが鳴るギリギリまで
友達と話している天野を

遠くに見つめる。


ぼんやりと天野を見つめていると、
席に着いた天野と目があった。


「一ノ瀬くん、どうしたの?」


「ん? あ、いや。なんでもない。
寝るなよ、天野」


「うん、頑張るっ。一ノ瀬くんもね」


「っす」


隣の席では、
天野が小さくあくびをしていて、

あくびを隠す天野の手ひらに
目がとまる。


つうか、手、小さすぎだろ。


そんな小さな手のひらじゃ、
片手でバスケットボール
持てなさそうだよな。
  

天野を盗み見て、
柔らかそうな薄い唇で視線が止まり、

ドキリとする。


でも。

……羽衣?


鷹島は天野のこと、 
名前で呼んでいた。

 
羽衣……


名前で呼ぶなんて、
天野と、どんな関係なんだよ。


視線を漂わせると、

窓の外に視線を動かした天野と
目が合った。



「……羽衣」


「えっ?」


目をまん丸にしている天野に固まった。


あれ?


いま、俺、『羽衣』って、言ったような?



「あ、いや! 
えっと、ウイ……っす?」



「???……ういっす!」


キョトンとしながらも、
にっこりと笑った天野に耐えきれずに、

机に顔を伏せた。


やばい、

天野が可愛すぎて、

……死ぬ。



焦れば焦るほど、
意識すれば意識するほど、

天野とまともに話せなくなる。