「彼氏はいないってさ。
ま、そんな感じだよな。
安心しただろ」


あっけらかんと笑った伊集院から
顔を背けた。


「安心なんて、しない」


出来るはずがない。


「は? なにいきなり
険しくなってんだよ。

つうか、そんなに気になるなら、
もっといろいろやり方はあるだろ。

朝っぱらから学校の敷地内で
天野さんのこといきなり抱きしめるとか、

お前、頭煮えてるだろ。マジで大丈夫か?」


「言うな、頼むから触れるな」


あの瞬間、

あの茶髪の存在にいら立って、
思わず天野を腕のなかに抱え込んだ。


けれど、俺の腕のなかで
目を丸くして固まっている天野に
ハッとして我に返った。


呆れ果てる伊集院に、本音を漏らす。