今朝の花壇での出来事は、

正直、今でも現実味がなくて
なにが起こったのか理解できていない。


でも、まだ心臓だけが
破裂寸前にドキドキしている。


女の子たちの声がすると、

一ノ瀬くんは
走って体育館へ行ってしまって、

謎だけが残った。

本当に
あれはなんだったんだろう?


でも、
遅れて教室にやってきた一ノ瀬くんも、
とくになにも言わないから、

やっぱり、
私が転んだところを
支えてくれただけだったんだろうな。


いや、でも、なんだか
心臓の鼓動がただならぬことになっていて!

もう一ノ瀬くんの顔を見てるだけで
ドキドキがとまらない。


だって、一ノ瀬くん、
『眠い』って言ってたけど
私、まくらじゃないんだからっ!


心臓はドキドキするし、
一ノ瀬くんがコツンと乗せた肩は熱いし、

こんなの、
どうしていいか分からないんだからっ。


ホームルームが始まって、
隣に座る一ノ瀬くんをちらりと見てみると、

一ノ瀬くんは、
いつも通り眠そうにぼんやりとしている。


なんだか私ひとり意識しているみたいで、
恥ずかしいな。


休み時間も授業中も、
一ノ瀬くんはいつも通りで、

結局、なにも聞けないまま
放課後になってしまった。


あれは、もしかすると、
夢でも見たのかな……?

だとすると、
私、本格的にヤバイひとだ。

そんなことを考えながら
帰り支度をしていると、
叶奈ちゃんと朝歌が私の席まで来て、
声を落とした。