「おっ、王子が登場! 
じゃ、俺、練習行くねっ」


一ノ瀬くんに気がつくと、

伊集院くんは
その場から逃げるように、

グラウンドに戻っていった。


一ノ瀬くんとふたり残されて、
無言のまま一ノ瀬くんと向かい合う。


脱いだジャケットを肩にかけて、
ネクタイを緩くむすんでいる
一ノ瀬くんの立ち姿が

あまりに洗練されていて、

華やかなオーラを放つ一ノ瀬くんに
思わずぼーっと見惚れてしまう。


同じ制服を着ているとは
とても思えない。

一ノ瀬くんの制服だけ
フランス製とか?

いやいや、まさか!

でも、
伊集院くんの言っていたとおり、

たしかに、
一ノ瀬くんは
この学校の王子様なんだろうな。


ちらりと一ノ瀬くんを見上げて、

「うん、うん」と
大きく頷く。


一ノ瀬くんは、
やっぱりすごくカッコイイ。


いつもは眠そうにしているけれど、

部活前の一ノ瀬くんは
顔つきがガラリと変わって、

凛とした緊張感を漂わせて、
瞳の輝きが強くなる。



「伊集院となに話してたの?」