「それより、天野、

プリントの仕分けめちゃくちゃ
早くないか?

それ、もはや職人技だから」


「そうかな?」


「プロになれるよ」


「本当に⁈」


と一瞬喜んでみたものの、
ふと首をかしげる。


「でも、
数学プリントの仕分けのプロ?
……あんまり嬉しくないかも」


「……だな」


一ノ瀬くんと目を合わせて、
吹きだした。


不思議と
一ノ瀬くんと過ごす時間は
居心地がよくて、

憂鬱なはずの時間も
あっという間に過ぎていく。


気が付けば
山のようにあったプリントの仕分けも
終わっていた。


「お疲れ、天野」


「思ったより
早く終わってよかったね!

一ノ瀬くんは、
部活、間に合いそう?」


「ん、プロがいてくれたから助かった」


冗談交じりに明るく笑った
一ノ瀬くんが

ポンと私の頭に手を置いた。


わわっ!

驚いて
一ノ瀬くんをドキリとして見上げる。


「どうしたの?」


サラリと前髪を揺らして

一ノ瀬くんは、
動揺している私を
不思議そうに見つめているけど!


こ、こんなの、
普通じゃいられないよっ!


ものすごい破壊力なんだからっ!


目線を合わせて
じっと見つめてくる一ノ瀬くんから、

一歩うしろに下がる。


心臓がドクンドクンと
大きな音を立てて、

なんだかもう、
恥ずかしくてたまらない。