「だから、
うちの高校で礼くんがアイドルしてるって
聞いた時には、
びっくりしたっていうか、
深い闇を感じて怖かったっていうか!」


「たしかに……

でも、鷹島先輩は
どうしてそんなことを?」


「お姉ちゃんが、
開南高校では愛想よく、感じよくしろって
礼くんに言ったんだって。

問題起こしたら、秒で離婚って。

礼くんにとって、お姉ちゃんの命令は
絶対だから。 

愛のチカラ、すごいよね!」


「いや、普通に笑ってる天野がすごい」


「え?」


「いや、なんでもないよ。

でも、安心した。

鷹島先輩は羽衣のことを好きなんじゃないかって、ずっと気になってたから」


あれ

今、一ノ瀬くん、

……『羽衣のことを』

って言った?


じっと一ノ瀬くんを見つめて、
かぁっと恥ずかしくなって
下を向いた。


「どうしたの?」


「あ、えっと、今、一ノ瀬くん、
『羽衣』って呼んでくれたから」


「……可愛すぎだろ」


「え?」


「いや、なんでもない。
それより、ちょっとこっちきて」


一ノ瀬くんに
呼ばれて、その唇に耳を近づけると。


「羽衣、大好きだよ」


耳元でささやかれた一ノ瀬くんの甘い声に、
へなへなとその場に座り込んだ。