「あーまーのー!」


ガラっと教室の扉を開けると、

夕日に包まれた
柔らかい天野の笑顔が目に入る。


そのままトンと、天野を机に押し倒す。


「ど、どうしたの、一ノ瀬くん?」


驚いて、目をパチパチさせている天野に
顔を寄せる。


「ねぇ、天野、本当?」


「なにが?」


「鷹島先輩と天野が、
フロとか、ベッドとか!」


「ん? 礼くん? なんのこと?」


鷹島のことを名前で呼ぶ天野に
イラっとする。


「あのさ、なんで彼氏の俺は一ノ瀬くんで、
鷹島先輩のことは礼くんなわけ?」


「そ、それは、礼くんとは
小さい時から一緒にいるから」


「今、天野が一緒にいるのは?」


「一ノ瀬くんだよ?」


「……イチノセくんね」


はあ。

深ーいため息をついてちらりと
天野をにらむ。


と、天野が俺の顔をのぞきこむ。


「私が、好きなのも、一ノ瀬くんだよ?」


天野の顔が真っ赤なのは
きっと夕日のせいじゃない。


キョトンとした顔をしている
天野の小さい顔に

鼓動が早まる。


そんな可愛い顔するなよ、天野。


そのまま、天野の顎を指先で引き寄せて
そっと天野の唇をふさいだ。


「……っん」


「ん?」


唇をはなして
天野を腕のなかに抱えると

なにやら、
天野がつぶやいた。


「こうくん、のことが好き、だよ?」


真っ赤な顔で
目を潤ませている天野に
めまいがする。


あー、もう、
鷹島のことなんてどうでもいい。


すると、天野が俺の腕の中で
ゆっくりと顔を上げる。


「あのね、もし、礼くんのこと
気になるなら、

その、良かったらうちに来る?」


「え?」


「じつは、お姉ちゃん、私のことを心配して
お父さんと帰国しちゃったの。
またすぐにアメリカに戻っちゃうんだけど」


「天野のお姉さん?」


「うん、お姉ちゃんも
えっと…こうくん、に会いたがってて」


天野に名前で呼ばれて、
顔が熱くなる。


「あー、うん、……えっと、天野」


しばらく考えて、天野に伝えた。


「しばらく、一ノ瀬で、いい。

名前で呼ばれると、
ちょっと理性を保てそうにない」


目を丸くしている天野が可愛すぎて、
もう一度、その唇をふさいでおいた。