「これでうるさい奴らがいなくなって、
集中して練習できるんじゃないか?

ま、お前がちゃんと結果だしてくれれば
それが一番だからな」


そう言って前川先生と一ノ瀬くんは
笑い合っているけれど。


「どうした、天野?
少し強引だったけど
これで公認ってことで!」


にっこりと無邪気に笑った一ノ瀬くんを
涙の滲んだ目でジロリとにらむ。


「どうした、じゃないよ…… 」


「嫌だった?」


嬉しそうに笑っている一ノ瀬くんから
目をそらす。


「………」


「天野、ちょっと怒ってる?」


「ちょっとだけじゃないよ。
すごく怒ってる」


けれど、
一ノ瀬くんは目を輝かせて甘い顔。

でも、今日は本当に怒ってるんだから!


「みんなの前であんなことして…
ものすごく恥ずかしかった!」


声を大にして伝えると、
一ノ瀬くんが爽やかに笑う。


「あんなの恥ずかしがってたら、
これからもっと大変だよ?」


え?


「天野、俺のこと、ちゃんと見てろよ!」


返事をする間もなく、

柔らかい笑顔を残して

ボール片手に
一ノ瀬くんはコートに走り出していた。


夕陽の差し込むコートで

一ノ瀬くんが
まっすぐに背筋を伸ばして

迷いなくゴールを目指す。


凛とした瞳でゴールをとらえる
一ノ瀬くんがオレンジ色に輝いて、

その美しさに息をのんだ。