隣のキミをもっと溺愛、したい。

放課後、担任の前川先生に呼び止められた。


「天野、今から帰るところか? 
それなら体育館にこれ、
届けておいてくれ」


その一言に動きをとめる。


「体育館に?」


一ノ瀬くんとは
コソコソせずに付き合っていこうと
決めたものの、

一ノ瀬くんの熱烈なファンのいる
体育館に行くのは、正直怖かった。


「頼んでもいいか、天野?」


「はい」


先生からファイルを
受け取ってしまったものの、
気持ちは重く沈んでいく。

負けちゃいけないと思うけれど、
集団で囲まれた時の怖さを思い返して、
気持ちがふさいでいく。


でも、そんなこと言ってられない。


一ノ瀬くんのことを好きなら
いつかは、
向き合わなきゃいけないことだった。


体育館に入るやいなや、
冷たい眼差しを向けられて、足がすくむ。


嫌がらせをしてきた3年の先輩たちは
最近、見かけなくなっていたものの

一ノ瀬くんのファンクラブの女の子達からの
冷たい視線がつき刺さる。


足をかけられてつまずいたところで、
一ノ瀬くんがすぐ目の前に現れた。


「い、一ノ瀬くん、練習は?」


一ノ瀬くんに支えられて体を起こすと、
女の子たちの悲鳴が響く。


「あのさ、俺のカノジョ、
これ以上いじめないでくれる?」


一ノ瀬くんの、
その一言に、静まり返る体育館。


「キラくん、騙されてるっ!」


「キラくんは、
みんなのものなんだから、
そんな勝手なことされると……」


その瞬間、一ノ瀬くんが
手にしていたバスケットボールを
遠くの壁に思いきりぶつけた。


鈍い音が体育館に響き、
重苦しい沈黙に包まれる。


「俺が誰のことを好きになろうが、
だれとつき合おうが、関係ない」


殺気を帯びる一ノ瀬くんの言葉に
その場が静まり返る。


「それに、俺、キラなんて名前じゃないし」


「で、でも、キラくんに彼女なんて、
そんなの……」


「じゃ、今、ここで
天野が俺のカノジョだって

証明しようか?」


怒っているはずの一ノ瀬くんが、
ニッコリと笑って私を向く。


ん? 証明?

でも、証明って、どうやって?


と思う間もなく、
一ノ瀬くんの長い両手に捕獲された。


い、嫌な予感っ!!