「ずっと思い出せなかったこと、
……多分、今、思い出した」


「ホントッ?!」


「良かったじゃん、羽衣!」


「うんっ」


優しく微笑むふたりに、
涙まじりの声で答えた。

まぶたの裏が熱くなり、
こぼれそうになる涙を必死でこらえる。
 

それが何故なのかは分からないけれど、

おそらく忘れていた記憶のほとんどは、
一ノ瀬くんと過ごした時間。


「羽衣、一ノ瀬くんとつきあうのは
色々大変だと思うけど、

もし困ったことがあったら
ちゃんと言うんだよ?」


「嫌がらせされるようなことがあったら
無理して我慢しちゃダメなんだからね?」


コクコクと
ふたりをまっすぐに見つめてうなずく。


今日までどれほどふたりの存在に
支えられたかわからない。


でも、
みんなに頼ってばかりじゃ、だめなんだ。


一ノ瀬くんと一緒にいるために、
私ももっと強くならなきゃいけないんだ。