その瞬間、

おぼろげな映像が 
ゆっくりと浮かび上がった。


輪郭の曖昧な記憶が、
少しずつ鮮やかな色彩を帯びてよみがえる。


朝の花壇で
一ノ瀬くんの腕のなかから見上げた景色。


いちごみるくキャンディー。


用具室でふたりで過ごした時間。


灯篭に照らされた
一ノ瀬くんの横顔。


つながれた手……


以前と変わらずに
そこにあったかのように

忘れられていた記憶が、
鮮明に息を吹き返す。


「どうしたの、羽衣?」

朝歌の声に、ハッと顔を上げる。


「……思い出した、かもしれない」


「え?」