【羽衣side】

一ノ瀬くんと手をつないで校門に向かう。

となりを歩く一ノ瀬くんを見上げると、
胸がキュウっと苦しくなる。


凛とした一ノ瀬くんの横顔は
自信に満ちあふれていて、

目が合うと優しく笑ってくれる。

そんな小さなことが
泣きたくなるくらいに嬉しくてたまらない。


まだ、校庭では
野球部やサッカー部が練習している。

それを取り巻く女の子たちからの
突き刺さるような視線を感じて、

足がすくんだ。


「い、一ノ瀬くん」

周りからの視線を感じて
つないだ手をはなそうとすると、

さらに強く
一ノ瀬くんが私の手をにぎる。


一ノ瀬くんを見上げると
甘い笑顔に包まれた。


「大丈夫だよ。
俺たちはなにも悪いことなんてしてない。

俺は天野と、
こそこそ付き合うつもりもない。

だから、天野も堂々としてろ」


「うんっ」


迷いのない一ノ瀬くんを見上げて、思う。
私も、もっと強くなろう。


理不尽なことにはちゃんと
立ち向かえるように

一ノ瀬くんみたいに強くなろう。



「ずっと、一緒にいような、天野」



弾けるような笑顔で笑う一ノ瀬くんに
私もすごく幸せな気持ちになって

大きくうなずいた。