唇をかんで、
涙をこらえている天野に近づき、

そっと、指先で天野の額の傷にふれる。


「天野にひどいケガをさせて、
こんなこと言う資格なんて
ないのかもしれない。

でも、もう俺は
自分の気持ちをごまかさない。

これからは、俺が天野のことを守る。
俺に、天野のこと守らせてほしい。

天野、俺の隣に、いてほしい」


涙で頬を濡らす天野を
じっと見つめる。


すると、
頬っぺたを真っ赤に紅潮させて、
天野が、ゆっくりと口を開く。


「私も一ノ瀬くんのことが、好き」


天野の言葉に、
その澄んだ眼差しに、

心臓の鼓動が激しくなる。


「いろいろなこと、
思い出せなくてごめんなさい。

でも、好きなの。
ただ、一ノ瀬くんのことが好きなの」


天野の震える声に、
大きく感情が揺さぶられる。


「俺も、ずっと天野のことが好きだった」


何度繰り返しても足りない。

ずっと、天野に伝えたかった。
ずっと、天野だけを見てきたんだ。


天野の頬に手を伸ばして
涙をぬぐうと

天野が
恥ずかしそうに笑いながらも、
ポロポロと涙をこぼす。


そんな天野を、
涙ごと両手で強く抱きしめた。


「天野、これからはどんなことでも
俺に、教えてほしい。

嫌なことや、怖いこと、
天野が苦しんでること、全部。

ひとりで抱えるな」
 

コク、コクと
腕のなかでうなずく天野が
愛おしくてたまらない。


もう、絶対に離さない。


「天野、俺とつきあってほしい」


「はいっ」


俺の胸のなかで
柔らかい笑顔で答えた天野を、
思いきり抱き締めた。