わっ、わわっ!


なぜか、すぐ目の前には、
一ノ瀬くんの胸が迫っていて!


ち、近いよっ!


一ノ瀬くんが、近すぎるっ!


そのとき、パタパタと足音が近づき
朝歌がやってきた。


「お待たせ、羽衣!
……と一ノ瀬くん?」


朝歌がやってくると、
ハッとしたように一ノ瀬くんが
体を離す。


「どうしたの、羽衣?」


朝歌が頭をかしげているけれど、

自分でもなにが起こったのか
よくわからない。


「じゃ、またな、天野」


柔らかな笑顔を残し、
前髪をサラサラとなびかせて
走って去っていく一ノ瀬くんを

呆然と見送った。


「どうしたの?」


はっ!
 

「な、なんでもない。
ゴミ、ついてたみたいで!」


で、でも、心臓がドキドキしすぎて、

なんだか息は上手くできないし、
声はかすれるし!


「一ノ瀬くん、
ホント、カッコいいよね〜。
キラッキラに輝いてるわ。

笑ってる顔、初めてみたけど
ありゃヤバイわ。美の暴力だね」


あっけらかんと笑う朝歌の隣で
必死に呼吸を整えた。


い、今のは、
いったいなんだったんだろう?