すると、
一ノ瀬くんが
険しい顔をしたまま、

いきなりその指先を
私に伸ばした。


わわっ!


びっくりして
目を丸くしていると、

一ノ瀬くんの指先が、
私のおでこをごしごしとこする。


?!?!


「ひえっ!」


おどろいて
後ろに飛び跳ねたところで、

ゴツンと勢いよく
頭を下駄箱にぶつけてしまった。


うっ……


「い、痛い……」



一ノ瀬くん、
どうしたんだろう?


「い、一ノ瀬くん。
ど、どうしたの?

おでこになにか、ついてた?」


「いや、えっと。つい?」


「ん?」 


……つい?


「いや、ごめんな。頭、打った?」


気まずそうに
笑った一ノ瀬くんの
アーモンド形の瞳が優しく揺れて

心臓がドキンと大きく跳ねる。


すると、さらに一歩近づいた
一ノ瀬くんが

そっと手をのばして
私の後頭部をなでた。