隣のキミをもっと溺愛、したい。

「お前ら、いい加減にしろよっ!」


「な、なんのことか、
全然わからないんだけど」


「このコが自分でお茶、
こぼしただけだと思うけど?」


「そ、それより、キラくん、
今度の大会……」


天野の手をつかんで、
俺の背中の後ろにかくすと、

天野にお茶をぶちまけていた奴らを
睨みつける。


怒りに、声が震える。


「いい加減にしろっつったのが
聞こえなかったかよ!

バレてないとでも、思ってんのかよっ!

天野がお前らに、なにをしたんだよ?

お前ら、
どこまで天野のことを追い詰めたら、
気が済むんだよ?」


「そ、そんなつもりは……」


「キ、キラくんのためにって、」


それでも、ごまかそうとするそいつらに
殴りかかりそうになるのを必死に抑えて

低い声を絞り出す。


「俺が天野を好きで、なにが悪いんだよ」


驚いて息をのむ天野を背中に感じながら、
続ける。


「お前らホント、ふざけんじゃねえよっ」


そいつらを睨みつけながら
声を荒げたそのとき。


「おーっ、一ノ瀬、ここにいたんだ~♪」



どこからやってきたのか、
伊集院がいつもの爽やかな笑顔を浮かべて
呑気な声をだす。


すると、伊集院が
天野の汚れた足元に視線を動かした。


「一ノ瀬、そんな奴らに怒っても
無駄だって。

だって、この先輩たち、
一ノ瀬がいなくなったら、
また天野さんに嫌がらせすると思うよ。

今までみたいに?

いや、もっと酷いことしそうだよね。

一ノ瀬にバレたのも、
全部、天野さんのせいっ! みたいな?」


薄い笑いを浮かべる伊集院に、
その場が静まり返る。


「この場から一ノ瀬がいなくなったら、
即、天野さんのことフルボッコでしょ?」


「そ、そんなことっ!」


「お、図星~! さすが俺!

あのさ、さすがにここまでやると、
バスケ部、問題行動の責任とらされて
大会出られなくなるよ?

先輩たち、
バスケ部の応援団なんですよね、一応?」


気まずそうに下を向くそいつらに
伊集院がニッコリと笑いかける。


「このくらいでやめておかないと、
マジで先輩たちもヤバイんじゃないですか?

だって、
3年なら進路のこととかあるだろうし?

うちの学校、スポーツに力入れてるし?

ま、これって
十分いじめの範疇に入っちゃってるし」


爽やかに笑いながらも
伊集院が声を冷たく尖らせる。


「先輩たち、天野さんにケガさせたら、
傷害罪になるってわかってます?

あのね、たとえ部が違ったとしても
学校内でそういう「不祥事」があるのは
迷惑なんですよね。

うちら野球部も本気で勝負してるんで、
ほんと、こういうの迷惑」


「べ、べつに、嫌がらせとかしてないしっ。今回はたまたま…」


「ふざけんなよっ!」


カッとしてそいつに詰め寄ると、
俺を制して、伊集院がへらりと笑う。


「いや、俺、偶然なんすけど

先輩たちが、天野さんのことを
廊下で突き飛ばしたり、
足かけたり?

あ、あとさっきの水かけてる、
みたいなシーン、

ほんっと偶然に
スマホで録画しちゃってて。

いや、ホント、すごい偶然。

そろそろガッコに報告して
先輩たちのこと、
処分してもらわないとなーって
思ってたところだったんですよね」


スマホをひらひらとゆする伊集院に
そいつらが凍り付いている。


「俺、一ノ瀬みたいに優しくないんで、
嫌いな奴は
徹底的にぶっつぶす主義なんすよね〜♪」


すると、それを聞いたひとりが
不満気に呟く。


「伊集院くん、
全然爽やかなんかじゃ、ない」


漏れ聞こえてきたその一言に
伊集院が、サッと表情を消した。


「それってあんた達みたいなひとが
勝手に作り上げたもんでしょ。

スポセン3でしたっけ?

一ノ瀬がキラくんって呼ばれるのを
嫌がってることにも気が付かないで、
こんな嫌がらせしてさ。

自分から嫌われてるようなもんじゃん。

そもそも、
一ノ瀬も王子キャラなんかじゃねえし。
こいつは、ただのバスケバカ」


「おい、伊集院、いいからもう行くぞ。
天野、このままだと風邪ひく」


ケンカ腰になっている伊集院を、
そいつらから無理やり引き離す。

伊集院が本気で切れると、
手に負えなくなる。


「ってことで、今後天野さんの
半径10メートル以内に近づいたら
先輩たち、公開処刑なんで♪」


「おい、伊集院! 行くぞ」


「さすが、王子は優しいねえ。
ま、あんたたちの王子じゃなくて、
天野さんの王子だけどな」


「黙れよ、伊集院。

それから、お前ら、
つぎに天野になにかしたら
絶対に許さねぇからな」


「はは、一ノ瀬が一番、怖えし」