「具合が悪いなら、廊下を走るなっ」
声を張る立山に小さく頭をさげて、
保健室へと急ぐ。
肩で息をして保健室のドアをひらくと
養護教諭の山田が振り向いた。
「あの、天野の様子を見に来たんですけど」
「あ、天野さんのクラスの子?
天野さん、奥のベッドで寝てるわよ。
もう、ぐっすり眠っちゃって。
私、これから出かけなきゃいけないから
丁度良かった。
もう少ししたら起こしてあげて。
この前大きなケガをしたみたいだから、
あまりに具合が悪そうだったら、
すぐにほかの先生、呼んでね」
養護の山田が出ていくと、
静まり返る保健室に
天野とふたりきりになった。
気持ちよさそうに眠る天野の寝息が
保健室に静かに響く。
天野の眠っているベッドサイドに
イスを出し、
天野の小さな寝顔をじっと見つめる。
天野の額には
石段から落ちた時にできた傷跡が
生々しく残っている。
その赤みを帯びた傷跡に
震える指先でそっと触れる。
「ごめんな、天野」
天野の代わりに、
俺がケガすればよかったのにな。
俺が天野に近づかなければ
天野をケガさせることもなかったのに。
そう思って、
もう天野に近づかないと決めたのに、
こんなふうに、こっそりと
天野を追いかけるようなことをして。
ほんと、何してんだろうな……
なにが正しくて、
なにが間違っているのか、
全然分からない。
天野を無視したときの、
天野の傷ついた顔。
天野にあんな顔をさせて
これで天野を守っていることになるのか?
でも、もう
天野に怖い思いはさせたくないんだよ。
天野の額の傷をそっと指でなでながら、
ぽつりと呟く。
「どうしたら、いいんだろうな」
俺もこれまでのことを
全部忘れちゃえばいいのかな。
俺の気持ちも、
全てなかったことにしてしまえば、
これ以上、天野が苦しむことだって、
ないのかもしれない。
頭のなかでは
悲観的な考えばかりが巡るのに、
気持ちよさそうに
すやすやと眠っている天野を見ていると、
ふっと心が緩む。
全部、夢だったらいいのにな。
あの日、階段から落ちたことも、
天野がケガしたことも。
そしたら、今でも
天野と一緒にいれたかもしれないのにな。
気持ちよさそうに眠りにふける
天野の寝顔に、
授業中、居眠りをしている
天野の横顔が重なる。
「ホントにお前、よく寝るよな」
小さく笑って、天野の頬に手をそえる。
声を張る立山に小さく頭をさげて、
保健室へと急ぐ。
肩で息をして保健室のドアをひらくと
養護教諭の山田が振り向いた。
「あの、天野の様子を見に来たんですけど」
「あ、天野さんのクラスの子?
天野さん、奥のベッドで寝てるわよ。
もう、ぐっすり眠っちゃって。
私、これから出かけなきゃいけないから
丁度良かった。
もう少ししたら起こしてあげて。
この前大きなケガをしたみたいだから、
あまりに具合が悪そうだったら、
すぐにほかの先生、呼んでね」
養護の山田が出ていくと、
静まり返る保健室に
天野とふたりきりになった。
気持ちよさそうに眠る天野の寝息が
保健室に静かに響く。
天野の眠っているベッドサイドに
イスを出し、
天野の小さな寝顔をじっと見つめる。
天野の額には
石段から落ちた時にできた傷跡が
生々しく残っている。
その赤みを帯びた傷跡に
震える指先でそっと触れる。
「ごめんな、天野」
天野の代わりに、
俺がケガすればよかったのにな。
俺が天野に近づかなければ
天野をケガさせることもなかったのに。
そう思って、
もう天野に近づかないと決めたのに、
こんなふうに、こっそりと
天野を追いかけるようなことをして。
ほんと、何してんだろうな……
なにが正しくて、
なにが間違っているのか、
全然分からない。
天野を無視したときの、
天野の傷ついた顔。
天野にあんな顔をさせて
これで天野を守っていることになるのか?
でも、もう
天野に怖い思いはさせたくないんだよ。
天野の額の傷をそっと指でなでながら、
ぽつりと呟く。
「どうしたら、いいんだろうな」
俺もこれまでのことを
全部忘れちゃえばいいのかな。
俺の気持ちも、
全てなかったことにしてしまえば、
これ以上、天野が苦しむことだって、
ないのかもしれない。
頭のなかでは
悲観的な考えばかりが巡るのに、
気持ちよさそうに
すやすやと眠っている天野を見ていると、
ふっと心が緩む。
全部、夢だったらいいのにな。
あの日、階段から落ちたことも、
天野がケガしたことも。
そしたら、今でも
天野と一緒にいれたかもしれないのにな。
気持ちよさそうに眠りにふける
天野の寝顔に、
授業中、居眠りをしている
天野の横顔が重なる。
「ホントにお前、よく寝るよな」
小さく笑って、天野の頬に手をそえる。



