私に気が付くと、
くるりと後ろをむいた一ノ瀬くんを
引き留めた。
「一ノ瀬くん、聞きたいことがあるの」
「ごめん。急いでるから帰るな」
逃げるように出口に向かった
一ノ瀬くんの背中に話しかける。
「あのね、私、ケガをして
忘れてしまったことが、あるみたいなの。
みんな、無理して
思い出さなくていいっていうんだけど、
それじゃいけない気がするの。
でも、なにを忘れちゃってるのか、
それすら、わからない。
一ノ瀬くん、なにか知らないかな」
そう言いながらも、
一ノ瀬くんの背中から
強い拒絶を感じて、自信がなくなっていく。
こんなことを聞かれても
きっと、迷惑なだけだ。
一ノ瀬くんだって
部活で大変な時期なのに。
「変なこと聞いて、ごめんね。
どんなことでもいいから、
思い出したかった……んだけど、」
なんとか絞り出した声は、
かすれて徐々に小さくなっていく。
「ごめん、俺もなにも知らない。
思い出せないなら、
思い出さないほうがいいってことだろ」
突き放したような一ノ瀬くんの声色。
私は、なにを期待していたんだろう。
情けなくて、
ゆっくりと視線を落とす。
これ以上、聞いても、
一ノ瀬くんのこと、困らせちゃうだけだ。
「そう、だよね。
ごめんね、変なこと聞いて。
本当のこというと、病院で
一ノ瀬くんが言っていた『約束』も、
まだ、思い出せてなくて。
きっと、私、一ノ瀬くんとの約束、
守れなかったんだよね?
……ごめん、なさい」
そこまで伝えて、
ポロリと零れそうになった涙を
あわててぬぐう。
どうして、こんなに悲しくて
たまらないんだろう。
一ノ瀬くんが背中を向けていて
良かった。
零れてしまった涙を
見られなくて良かった。
「部活がえりに引き留めて、ごめんね」
せめて声だけ明るく。
一ノ瀬くんに謝った。
くるりと後ろをむいた一ノ瀬くんを
引き留めた。
「一ノ瀬くん、聞きたいことがあるの」
「ごめん。急いでるから帰るな」
逃げるように出口に向かった
一ノ瀬くんの背中に話しかける。
「あのね、私、ケガをして
忘れてしまったことが、あるみたいなの。
みんな、無理して
思い出さなくていいっていうんだけど、
それじゃいけない気がするの。
でも、なにを忘れちゃってるのか、
それすら、わからない。
一ノ瀬くん、なにか知らないかな」
そう言いながらも、
一ノ瀬くんの背中から
強い拒絶を感じて、自信がなくなっていく。
こんなことを聞かれても
きっと、迷惑なだけだ。
一ノ瀬くんだって
部活で大変な時期なのに。
「変なこと聞いて、ごめんね。
どんなことでもいいから、
思い出したかった……んだけど、」
なんとか絞り出した声は、
かすれて徐々に小さくなっていく。
「ごめん、俺もなにも知らない。
思い出せないなら、
思い出さないほうがいいってことだろ」
突き放したような一ノ瀬くんの声色。
私は、なにを期待していたんだろう。
情けなくて、
ゆっくりと視線を落とす。
これ以上、聞いても、
一ノ瀬くんのこと、困らせちゃうだけだ。
「そう、だよね。
ごめんね、変なこと聞いて。
本当のこというと、病院で
一ノ瀬くんが言っていた『約束』も、
まだ、思い出せてなくて。
きっと、私、一ノ瀬くんとの約束、
守れなかったんだよね?
……ごめん、なさい」
そこまで伝えて、
ポロリと零れそうになった涙を
あわててぬぐう。
どうして、こんなに悲しくて
たまらないんだろう。
一ノ瀬くんが背中を向けていて
良かった。
零れてしまった涙を
見られなくて良かった。
「部活がえりに引き留めて、ごめんね」
せめて声だけ明るく。
一ノ瀬くんに謝った。



