隣のキミをもっと溺愛、したい。

「おはよ」


「?」


花壇にもどったところで
見知らぬ男子に声をかけられて、
首をかしげる。


誰だろう?

なんだか、ものすごく爽やかなひとだ。


「あのさ、天野さん。
俺のこと、覚えてる?」

「えっと」

私、こんなに爽やかなひとと話したこと、
あったかな?


頭をフル回転して考えてみるけれど、

いくら考えても、
思い出すことができない。


「なるほどな。
一ノ瀬がへこんでる理由がわかったよ。
天野さん、記憶、なくしてるでしょ」


その一言に、

退院以来、感じていた違和感の理由が
はっきりと分かった気がした。

部分的に思い出せないことが
あるんじゃない。

おそらく、
すっぽりと失くしてしまった記憶が、ある。


たとえば、今、目の前にいる爽やかなひと。


いつ、どこでこの人と 
知り合いになったのか、
どうしても思い出すことができない。
   
名前すら、思い出せない。


でも、よくわからない。


だって、朝歌のことや叶奈ちゃんのことは
ちゃんと覚えていて
普通に生活できてるのに。

礼くんやお母さんと話していて、
そんな不自然さを感じることはないのに。


私は、
なにを忘れてしまったんだろう?


必死に頭をめぐらせて
考えてみるけれど、

考え始めると
ズキンと頭の奥が痛んで
それ以上なにも考えられなくなってしまう。