「なんにしてもさ、
鷹島先輩が言う通りだよ。 

もう羽衣にケガさせないように
気を付けようねっ」


神妙な顔でうなずくみんなの優しさに
心がじーんと熱くなる。


でも、礼くんの言っていた
『危ないこと』って、
なんだろう?


その日は一日中、
礼くんのことを聞かれて大変だった。


でも、詳しいことは話さないように
お姉ちゃんから言われてるから 

礼くんとは遠い親戚ということで
みんなに説明したけれど

本当のことを言えないのは
ウソをついているようで心苦しかった。


「そういえば一ノ瀬くん、
MVPとったみたいだね!」


「さすがだよねっ!
スリーポイントで日本一だって!」


どこかから聞こえてきたその話に
動きを止める。

MVP?

スリーポイント?


なにかが引っかかる気がする。


けれど、
記憶の糸はその先まではつながらない。


いろいろな記憶が混ざりあっていて、
頭のなかがすっきりしない。


バラバラのパズルが、

頭という瓶のなかで
ぐちゃぐちゃになってるみたい。

大切なピースが抜け落ちたまま、 
探せないようなそんな気分。