「羽衣、自分の名前とか、
年齢とか、覚えてるか?

俺がだれなのか分かるか?」


いつになく真剣な眼差しで、

必死にたずねてくる礼くんに
戸惑いながらも、

答えを返す。


「うん、分かるよ。
それより礼くん、どうしたの?」


「羽衣、なにがあったのか、
思い出せるか?」


「うん、なんとなくだけど、覚えてるよ。 
どこか高いところから落ちた……気がする」


必死に質問をかさねる礼くんに
首をかしげる。


「礼くん、そんなに深刻な顔して
どうしたの?」


すると、スルドイ痛みが首筋にはしり
目をぎゅっとつぶる。


なんだか、体のあちらこちらが
痛くてたまらない。


「羽衣、三日間、
目が覚めなかったんだよ。

意識がもどらなかったら
どうしようって焦った」


……え? 

そんなに長い時間?


「リラもすごく心配してる。
羽衣、本当に大丈夫なんだよな?」


「少し頭は痛いけど、
大丈夫だと、思う。

礼くんがサッカーがすごく上手なのも、

お姉ちゃんが今、
アメリカにいるのもちゃんと覚えてるよ」


「よかった! とにかく、良かった。
とりあえず、医者、呼んでくるな!

なにかあったら、
すぐナースコール押すんだぞ。

それから羽衣が目を覚ましたこと、
みんなに連絡してくるな」


「ん」


礼くんがバタバタと病室を出ていくと、
からだを起こそうとして

顔をしかめる。

ううっ、痛い。


すこし体を動かすだけで
全身に激痛が走り、

思ったように体を動かすことができない。


あちらこちらが痛すぎて、
もうどこが痛いのか分からないくらい。


でも……


白い天井を見ながら
不思議に思う。


どうして、
こんなケガしちゃったんだろう?