走って病院に向かい、
病院の総合案内で天野の病室を聞く。

すぐに天野の病室に向かったものの、

閉じられた病室の扉には
面会謝絶の札がかけられていた。


しばらく面会謝絶の札の前で
立ち尽くしていると、

尖った低い声が響いた。

「こんなところまで、なにしに来たんだよ」

振り返ると、
そこにいたのはサッカー部の鷹島だった。


「なんで、鷹島先輩がここに?」


「お前こそ、
なんでこんなところまで来てるんだよ」


鷹島の敵意むき出しの言葉も
今はどうでもよかった。

とにかく天野に会いたい。

せめて、ひとめだけでも。


「あの、天野は?」


かすれた声を絞り出すと、
迷惑そうに鷹島がため息をつく。


「家族以外面会謝絶。

見舞いには来ないように
学校には伝えたはずだけど」


「そう、ですか」


鷹島の言葉に、

視線を落として
立ち尽くすことしかできない。


鷹島がここにいる理由も、
今はどうでも良かった。


ただ、天野に会いたくてたまらない。


すると、少しためらって
鷹島が白いドアをスルスルと横に引いた。


「いいよ、入れよ」


白い扉が横に開かれ
目の前に飛び込んできた光景に

息が止まる。


そこには
頭に包帯を巻いて
酸素吸入用のマスクをつけて
横たわる天野の姿があった。


「天野は…」


震える声も、
動揺ももう隠しようがなかった。


「ケガはたいしたことないけど

頭を強く打ったせいで
まだ意識が戻らない。

意識が戻ってみないと
羽衣がどうなるかは、わからない」


「どう、なるかって?」


湧き上がる感情を堪えるように
強く、拳を握る。


「全身をきちんと
動かすことができるのか、

知能的にも、
これまで通りの生活が送れるのか。

目が覚めてからじゃなきゃわからない。

これまでのことを、
すっかり忘れてる可能性も、ある」