教室では天野が登校しないまま
朝のホームルームが始まった。

空いている天野の席をじっと見つめる。


やっぱり
ひどく体調を崩しているのかもしれない。

それにしても…

ぬぐいきれない不安に
思考を巡らせていると、

厳しい顔で
担任の前川が教室にはいってきた。

顔を強張らせて
ちらりと俺を見た前川の表情に、
ドクンと心臓が嫌な音を立てる。


つぎに前川が口にした言葉に固まった。


「天野は、少し大きなケガをして、
しばらく入院することになった。

今後、復学できるのかも含めて、
まだ状況がはっきりしない。

しばらくの間、
見舞いも控えてほしいと
ご家族から連絡をもらった」

天野が、……ケガ?

復学できるか、分からないほどの?

小刻みに震えはじめた指先を
止めることなんてできなかった。

ホームルームが終わると、

前川に詳しいことを聞くために
席を立ったそのとき、

伊集院に呼ばれた。


教室では、隣のクラスの山田がやって来て
深刻な顔つきで
天野の友達と話し込んでいる。


混乱して、
頭のなかを整理することができない。


天野が怪我?

いつ?
どうして?


混乱したまま、

伊集院に引きずられるように
非常階段の踊り場に連れていかれた。


いつになく緊張した顔つきの伊集院に

心臓がますます耳障りな音を立てる。


「一ノ瀬。落ち着いて聞けよ。

これに関しては、誰のせいでもない。
ましてやお前のせいでは、絶対にない」


伊集院の言葉に、
のどの奥がざらりとして
上手く呼吸することができない。


「なにが、あったんだよ。
天野、ケガして入院してるんだろ。
どういうことだよっ」


伊集院の肩をつかむと、

伊集院が
かすれる声で言葉を繰り出した。


「土曜日の神社の花祭りで、
石段から転がり落ちたらしい。

幸い命に別状はなかった。
ただ、まだ意識が戻らないって」


天野が、
石段から転がり落ちた?


「意識が戻らないって
どういうことだよ?

なんでそんなことになってんだよ?」


顔をそむけたまま、
ためらいがちに伊集院が言葉を選ぶ。


「頭を強く打ったせいで、

後遺症的なこともふくめて
今後どうなるかわからないらしい。

それから」


言いにくそうに続ける伊集院を
じっと見つめる。


「天野さんが石段の上から落ちたのは
お前の追っかけが、