「大会が終わったら告白するから
それまで待ってろって言った」


唖然とした顔で、
伊集院が視線を上げる。


「それって、もう立派な告白だよな?」


「試合が終わるまで待ってられない。
そんな悠長なこと言ってられない」


「ほお。ついにスイッチ入ったんだ」


「他のやつに取られてたまるかよ」


「他のやつ?」


その瞬間、鷹島の顔がちらりと浮かび
打ち消すように首を横に振る。


「いいんだよ、別に」


時計を見て、弁当を一気にかきこんだ。


「お前がいきなり先制かけるから、
天野さん、びびってるようにしか
見えないけどな。

怯えた小動物みたいになってたぞ」


「それで、いいんだよ。

天野の頭のなかが
俺のことでいっぱいになればいい」


ほかの奴のことなんて考えられないくらいに
俺のことだらけに、なればいい。


「お前、すげえな。迷いなき自己中。

天野さん、
他に好きなやつがいたらどうすんの?」


「俺を好きにさせるからいい」


「そこまでいくと、ある意味立派だわ。

あんなにグズグズしてたのに、
急にどうしたんだよ。

なんだか獲物を仕留めた
狩人みたいで怖いけどな。

狙われた天野さんが、ちょっと気の毒」


伊集院がなんと言おうと、
いまさら、後には引けない。


すると、伊集院が
心配そうに眉を寄せる。


「それはそうだとしても、
天野さん大丈夫なのかよ」


「大丈夫って?」


「キラくんファンのみなさん。

お前の追っかけ、かなりの数いるだろ。
お前に彼女とか絶対に許さないだろ」


「知るか。天野以外に興味ないんだよ。

とにかく今はMVP取って、
天野に告白することだけに集中する」


「もう、したようなもんだけどな」


呆れる伊集院に、まっすぐに伝える。


「天野がすこしでも
俺のこと意識してくれれば、

それでいい」


スポーツドリンクを
一気に飲み終えると立ち上がった。


「お前、なんだか楽しそうだな」


「ふっきれたからな」


「ふっきりすぎだろ。
天野さん、きっと動揺しまくってるぞ」


伊集院に軽く笑って、
昼練のために体育館に向かった。