一ノ瀬くんとふたりで下駄箱に向かい、

昇降口を抜けたときには
外はうっすらと暗くなっていた。


部活の終了時間から
だいぶ時間が過ぎているので、
校舎も校庭もガランとしている。


さっきまで
あんなに夕焼けが綺麗だったのに。


急ぎ足で沈んでしまった太陽を
恨めしく思いつつ、空を仰ぐ。


この様子だと、暗くなるまで時間の問題。
 

お守り、どうしよう。


連れ去られそうになった
あのお祭りの夜以来、

夜の神社には
なるべく行かないようにしていた。


でも、お父さん、
明日出発するって言ってたから、

お守りをもらいにいくなら、
今から神社に行かないと間に合わない。


無理して行かなくてもいいかな……


でも、活発なお姉ちゃんのことだから
アメリカでも
色々と無茶してるんだろうな……


やっぱり、神社に寄ってから帰ろう。


「天野、どうしたの?」


一ノ瀬くんの声にハッとする。


となりで包みこむように
優しく笑っている一ノ瀬くんを
ためらいながら見上げる。


「一ノ瀬くん、あ、あの、
もし時間があったら、

少しだけ
つきあってもらってもいいかな?

あ、もちろん、無理なら全然大丈夫!
その、もし、時間があったらで!」


「つきあう」


「え?」


間髪入れずに答えた一ノ瀬くんを
キョトンと見上げる。


「あ、えっと、いや、いいよ。つきあう。
どこに行きたいの?」


「花籠神社なの」


正面に見える佐助山を指さした。


「花籠神社?」


首をかしげた一ノ瀬くんの
なにげない仕草にも、

ドキドキして止まらない。


「神社になにしに行くの?」


「お守りをもらいたくて」