「ねえねえ、羽衣、
朝から眉間にしわ寄せてどうしたの?」


教室で頭を抱えていると
朝歌と叶奈ちゃんが私の席までやってきた。


「放課後にそなえて
予習しなくちゃいけなくて!」


そう答えながら、スマホを取り出した。


「おおっ、羽衣がやる気だ」


「いつになく真剣な顔っ!」


「うんっ、頑張るっ」


「でも、放課後?」


首をかしげるふたりに、大きく頷いた。


まずはバスケのルールを確認して、

それから
シュートの種類も
放課後までに覚えておかないと!


「天野、さっきから何見てんの?」


「え?」


朝練を終えて教室にもどってきた
一ノ瀬くんが
私の手もとの画面に視線を落とす。


「放課後にそなえて予習してて」


「予習?」


キョトンとしている一ノ瀬くんに
コクコクとうなずく。


「MVPかかってるし、
大切な試合だから!

間違えずにシュートの記録を
とれるようにと思って。

間に合うかわからないけど、
頑張るねっ!」


「……っす!」


そう言って、
一ノ瀬くんがこれまで見たこともないほど
柔らかく笑うから

なんだか私も嬉しくなった。