ペンを片手に
ノートに視線を落としている一ノ瀬くんに、
まだ心臓はドキドキしたまま。


すると、スラスラとペンを走らせていた
一ノ瀬くんが顔をあげた。


「この赤いラインより外側からのシュートが
スリーポイントシュート。

俺がこのラインより外側からシュートしたら、
そのポジションに〇か×かで記録してほしい。

部活後半に練習試合するから、そのときに」


澄んだ瞳を向けられて、
またひとつ心臓が飛び跳ねる。


「う、うん。わかった。やってみる」


コクンと頷いてみたものの。


「次のスリーポイントに、MVPかかってて」


なにげなく呟いた一ノ瀬くんに
パッと顔をあげる。


「MVP?」


「ん、スリーポイントでMVP狙ってて。
つぎの大会の結果で決まるんだ」


まっすぐに語る一ノ瀬くんに
動きを止める。


もしかすると、これって
ものすごく責任重大な任務なのでは?


MVPがかかってるような記録を
こんな素人に頼んじゃっていいのかな。


そのとき、ふと、朝歌の顔が頭をよぎる。


「あっ! 
朝歌、中学の時にバスケ部だったんだよ! 

あとで朝歌に聞いてみようか?」


さすがにそんなに責任重大な仕事を、
私みたいなド素人に頼むのは
危険すぎる。


ルールもあやふやだし、
なにより運動音痴でどんくさい!