「私も詳しくは知らないけど。

一ノ瀬くんのファンクラブは
規律が厳しいんだって。

個人的な一ノ瀬くんとの
接触禁止、とか

一ノ瀬くんの
生活の邪魔にならないように、
卒業までは見守り体制を死守とか」


「破るとどうなるの?」


「裏でかなりひどい嫌がらせを
されるって話だよ」


「それが原因で 
退学したコがいるらしいよ」


「こっそりと抜け駆けして
一ノ瀬くんに近づいたコが、
階段から突き落とされて

大けがしたって聞いたこともある」


そんなに恐ろしいことが
この学校で?


しかも一ノ瀬くんの周りで?


「あんまり関わり合いには
なりたくないよね」


ため息交じりに呟いた朝歌に、

叶奈ちゃんとふたりで
コクコクと大きくうなづく。


一ノ瀬くんがモテるのは
知っていたけれど

そこまで大変なことに
なっているとは思わなかった。


「でも、教室に一ノ瀬くんを見るために
女の子たちがよく来るけど、

そんな過激な感じのする子は
いないのにね?」


不思議に思って呟くと、

叶奈ちゃんが
ふたつめのパンを手にとりながら

口をひらく。


「一ノ瀬くんの
ファンクラブの子たちは

うちらの教室に
近づいちゃいけないはずだから」


「どうして?」


「一ノ瀬くんの
休憩の邪魔になるから」


「休憩?」


「一ノ瀬くんの舞台は体育館。
それでもって、
教室は休憩の場なんだって」