玄関を出ると、ヒヤッと冷たい風が肌を撫でる
門の先に停まっているお母さんの車
ハザードランプの点滅が彩未とおばあちゃんの顔をチカチカと照らした
母「"せつさん" いつもすみません」
運転席の窓を開け、お母さんが顔を出す
おば「いいえー、お仕事お疲れ様ね」
"せつ" とはおばあちゃんの名前だ
おば「はいこれ、少し冷めちゃってるけど温めて食べてね。ご飯まだでしょう?」
カレーをタッパーに入れたスーパーの袋を母に渡す
母「今日“カレーの日"ですもんね!
楽しみにしてました」
「いつもありがとうございます」と嬉しそうに母はそれを受け取る
彩未「じゃあまたね!」
おば「待ってるね」
助手席に乗り込み車の中から手を振ると
ニコニコしながらゆっくりと手を振り返してくれた
母は車周辺に目を通し、おばあちゃんに頭を下げてから車を発進させた
バックミラーには門の前に立っているおばあちゃんが見えていたが、道を曲がった所で見えなくなってしまった
母「今日の晩ご飯は楽しみだわー」
母も父もおばあちゃんのカレーが好きだ
2人もこの日を楽しみにしている
彩未(あ…)
ふと、さっきの疑問が蘇る
彩未(お母さんなら、何か知ってるかな)
彩未「あのさ、」
母「んー?」
車の中で流れている音楽のボリュームを2つほど下げながら口を開いた
