「俺って、そんなに存在感ないっ!?」
急に、佐伯くんは膝を抱えて、うーっと、泣く。
……何だか可哀想になってきた。
私は、一条くんの背中から離れて、恐る恐る佐伯くんに近づく。
「葉山さん!?」
一条くん以外の男子に近づくのは怖いけど。
泣いている人を無視するのも心が痛かったから。
ゆっくり近づいて、佐伯くんの肩を叩く。
「佐伯くん……。気付かなくて……ごめんね?」
「……はいっ、葉山ちゃんゲットー!」
肩に伸ばした私の手を、佐伯くんは満面の笑みで握っている。
「えっ、ええっ!? さ、佐伯くん!?」
泣きまねをしていた佐伯くんに、まんまと騙された。



