視界もにじんでいる。 遠くのほうから、葵が駆け寄ってくれているのが分かる。 「うっ……うぅ」 声をかけてくれた男の子は、しゃがんで、座り込んでいる私と目線を合わせた。 「……ごめん。どこか打った?」 男の子の声。 優しい声だった。 気遣ってくれるような、心配してくれるような、優しい声。 だけど、それすら、私にとっては怖いんだ。 体も動かないし、呼吸も整わない。 息が乱れる。 苦しい。 でも、何か喋らなきゃ。 どこも打っていません、って言わなきゃ。 言わなきゃなのに……。