数秒の沈黙の後、先に口を開いたのは一条くんだった。
「男性恐怖症、治ってよかったね」
それだけ言って立ち去る一条くん。
私はそんな彼に何も言えず、ただただ、後姿を見送っていた。
『男性恐怖症』
『治ってよかったね』
その言葉は胸に刺さった。
確かに、今日は男女問わず、チラシを配っている。
すごく緊張だってする。
怖いな、って思うよ。
だけど、チラシを配るのはダンスの宣伝ためだと思っている。
それに、葵が一生懸命作ってくれたチラシだから。
すれ違う人、全員に届いて欲しいと思うよ。
今は『男性恐怖症』とか、言い訳に出来ないんだよ……。



