「美桜ってば!」 葵の大きな声に、私はハッとして廊下の真ん中で立ち止まった。 「あ……。ごめん」 「呼んでも反応ないし」 「ごめん……」 私は掴んでいた葵の手を離す。 「……まだ、ダメなの?」 葵は少し心配そうに、私の顔を覗き込む。 「うん……。まだ、無理なんだ」 「そっか」 葵は私の頭を優しくなでた。 泣きそうになった。 葵の優しさが胸に沁みるのと同時に、自分の弱さに泣きそうだ。 「男の人……が、どうしても怖いの。女の子の集団も」