音楽が流れ始めて、3周したとき。 肩を叩かれびっくりする。 イヤホンを外して、振り返ると佐伯くんが立っていた。 少し、疲れた表情をしている。 「おまたせ」 いつもの元気がない佐伯くん。 どうしたんだろう、と思いつつ、私は鞄を肩にかけて帰る準備を終える。 「大丈夫。帰ろ?」 佐伯くんと歩いているけれど、まったく会話がない。 校舎を出ても、黙ったまま。 話したいことがあったはずなのに、この空気に負けて、なにから話せばいいのか忘れてしまった。