佐伯くんの私を抱きしめる腕が緩んだ。 私は佐伯くんと少し距離を取った。 そして、佐伯くんの頬に両手を添える。 「……葉山ちゃん?」 「佐伯くんも、辛かったんだね」 「だけど、それは理由にならない……っ」 佐伯くんが顔をゆがめる。 綺麗な顔立ちなのに。 もったいない。 「佐伯くん」 佐伯くんも、ずっと私のこと引きずってくれていたのかな? それだったら……。 お互い、痛み分けじゃないかな? 私も辛かった。 でも、佐伯くんも、人には言えない悩みをいっぱい抱えて辛かったんだよね。